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鐘の揺れて鳴る音がする(お試し版)

文字数(5780)

登場人物

吉ノ助:僧侶。好奇心旺盛で冒険心があり、深い思慮と勇気を持ち合わせており、困難に直面しても決して諦めない強い意志を持っている。

お里ちゃん:村の娘。心優しく、吉ノ助に淡い感情を抱いている。平和を願い、困っている人がいれば手を差し伸べる親切な性格。

和尚さん:老僧。吉ノ助の師匠。村の古い秘密や伝統を知る数少ない人物。慈悲深く、知識も豊富で、吉ノ助の精神的な支えとなっている。

草太:浪人。かつての武士。人との距離を置きがちだが、根は正義感が強く、村で困っている人がいれば力を貸すことも。静かに隠れるように暮らしている。

お絹:村の娘。社交的で陽気、お里の親友。村内でのイベントや集まりを楽しみ、人々を笑顔にすることを喜びとしている。

佐助:旅商人。外からの情報を村にもたらす。話術に長け、様々な商品や情報を取り揃えており、村人たちからの信頼も厚い。

清之助:漁師。勇敢で直情径行型の性格で、村の若者たちの中ではリーダーシップを発揮することも。

治兵衛:鍛冶屋。力強く、どんな硬い鉄も打ち形どる技術を持つ。村のために武器や工具を作ることに誇りを持ち、仕事に対する熱意は人一倍ある。

おとく:治兵衛の妻。薬草に詳しく、村人の健康を支える知識と技術を持つ。優しく、人々からの相談も多い。

村長さん:村の名主。伝統と村のルールを守ることに人生を捧げている。新しいものには慎重な態度を取るが、村の安全と繁栄を第一に考えている。

忠犬ブチ:吉ノ助が飼っている犬。甘ったれで人懐っこい性格。色んな意味で頼りになる存在。

 

第一話 和尚と将棋対局

 吉之助は、好奇心旺盛な僧侶で、村の外の世界に興味を持っていた。ある日、和尚さんから、村を守る「影」について耳にする。「影」の秘密を探ることが、吉之助の運命を変えてしまう旅の始まりとなった。

 「一局、お手合わせ願いませんか?」

 吉之助は、和尚さんに丁寧に話しかける。

「いつものこと、いつものことと、今日は、どうえ、、、、。」

 和尚さんは京都弁を柔らかに話し、妙な自信を醸し出している。

 吉之助は、最近将棋に夢中で、和尚さんと対局することばかり考えている。

  そこに、吉之助の幼馴染のお里ちゃんが入ってきた。

「まあ、まあ、また、将棋なの、困ったものね。

 吉之助さんは何を考えてるのかしら?」

 将棋を指しながら、吉之助が話を切り出す、

「和尚さん、今日の体調はどうですか?」

 「吉之助、何か私に聞きたいことがあるのなら、さやに言ってみなさい。」

吉之助は、盤上の自陣の歩を、相手の歩にぶつけた。

「師匠、実は、その、結局は、、、。』

 吉之助が思い煩っていると、お里ちゃんが口を挟む。

 「吉之助さん、聞きたいことがあるのなら、

男らしく、はっきりおっしゃったら、もう、、、。」

 「師匠、実は、師匠、この話は嫌うことなので、

実は先日、師匠が影という言葉を言ったの覚えていますか? 私、吉之助は、その影について知りたいのでございます。」

  和尚は、吉之助がぶつけた歩を取らずに、別の処の歩を合わせた。

「影、影か、そうだな、もう、吉之助に、この話をする時が来たのか、、、。」

 それと同時に、雷鳴が轟き、外では大雨が降りだした。

 

 

 

第二話 影の行方

 静かな夜、吉之助は和尚さんと、深い話に花を咲かせていました。そして、和尚さんから村を守る存在、「影」と呼ばれる者たちの話を聞かされます。「影」は、村を外敵から守るために暗躍していたのです。この話に心を奪われた吉ノ助は、もっと、「影」のことが知りたくなりました。

「そうか、、、吉之助。吉之助、年は、幾つになった。」

「師匠、ちょうど21になったばかりです。」

「そうか、、、。そうだな、年月が経つのも早いものだ。」

 和尚は、少し座り直して、法衣の懐に手を忍ばせた。

「そうだな、それは、15年余り前のことになる。

一人の幼子が、妙齢の婦人に手を引かれて、この寺にやって来たんだ。

その婦人の話によると、天涯孤独となった幼子を見るに見かねて、

この寺に預けることにしたとのこと。

 その幼子は、この寺で、生活を始めた。

私たち夫婦も、その子を実の子と思って接した。

そして、ようやく、立派な成年にまで育ってくれた。

その成年が、そう吉之助、お前のことだ。」

「吉之助、お前は、本当の両親の顔も知らぬが、よく、捻くれないで育ってくれたなあ。」

和尚は、袂を触って、ため息をついた。

吉之助は、少し微笑んで、

「和尚さんたちには、感謝しています。

私、吉之助を自分の子供同然に接してくれて、ありがとうございます。」

お里ちゃんも、2人の話を、自重して聞いている。

和尚は、庭の方へ視線を移す。

「吉之助、影のことが知りたいのか??」

「はい。」

和尚は、ためらうこともなく、スラスラと話し始めた。

「この村には、明らかに『影』がいる。

色即是空、まだ、私も見たことがないが、いるのは確かだ。

それは、6年程前の夜、私は檀家からの帰り道で、盗賊に襲われた。相手は3人、急いで逃げたが、結局、岩場のところに追い詰められてしまった。

3人の盗賊たちは、刃物をかざして向かってきた。

もうダメだ、と思った刹那に、家族の顔が頭によぎった。

その瞬間に、草むらの方で、足音がした。

と同時に、3本の矢が、ものすごい勢いで飛んできて、

3人の盗賊の足を射抜いてしまった。

誰だ、誰が矢を放ったんだ??

私は、とても不思議に思い、その矢の人物を追いかけた。

しかし、その主は、とてつもない速さで走り去って行く。

追いつかない、、、。

過去に書物で読んだことがある。読んでいる時は、作り話だと思っていた。

あれが、影なのか。影が実在するとは。」

和尚は、懐かしそうに、その話をした。

「和尚さん、その影とやらは、どこに行ったんでしょう??」

吉之助が尋ねた。

「吉之助、影が、どこに行ったのか知りたいのか。知ってどうする??

お前が、影の居場所を知ったところで、何になる。この世の中が変わるとでも言うのか??」

「和尚さん、この世の中が変わろうと変わるまいと、とにかく、影というものが、知りたいのです。

影という者は、そんなに悪い人たちじゃないみたいだし、、、。

影というのが、気になってしょうがないんです。」

「吉之助、そう、影の者は矢坂峠の方へ走っていった。」

「矢坂峠ですか。」

そこで、お里ちゃんが口をはさむ。

「吉之助さん、矢坂峠に行く気なの、、、

やめといた方が、いいわよ、、、。

そこは、危ない所だから、よしなさいよ。」

「大丈夫ですよ。僕は危ない所には近寄らない性格なので、心配しないで下さい。はっはっはっ、、、、。

師匠、もう一局、やりませんか?」

「吉之助も、影のことなど忘れて、もっと他の方に注意を向けると良いぞ。」

2人の将棋が、また始まった。

「師匠、この将棋は待ったありですか?」

「いやいや、待ったなしだ。」

「昨日は、待ったありでしたよ。」

「昨日は昨日、今日は今日だ。」

「師匠、自分が勝ちそうな時は、待ったなしですか。」

「いや、この将棋は吉之助が優勢だ。」

「師匠、そういう風には、見えませんが??」

吉之助と和尚は、話に花を咲かせていました。

 

 

第三話 うどん屋月見

 うどん屋月見で、吉之助、草太、お絹が、偶然にも集まっていました。春の陽気が心地よく、窓からは、さわやかな風が吹き込んできます。お絹は、ニコニコと笑いながら、話を始めます。草太は、かつての武士としての厳しい表情を少し和らげ、吉之助たちの話に耳を傾けています。

「あら、あんた、吉之助さんじゃないのよ。久しぶりね。元気だったの?」

「あっ、お絹姉さん、こんな処で会えるとは、、、。へーっ、お絹姉さんは、うどん、食べるんだ、、、。」

「吉之助さん、何言ってるのよ、、、。何でも食べるから、私は、いつも元気なのよ。そうそう、吉之助さん、本当に久しぶりね。」

「久しぶりです。」

吉之助は、きつねうどんを注文した。

「ちょっと聞くけど、吉之助さんは、もういる??」

「いるって、何がですか?」

「分かっているはずよ。これよ。そう、その位の年になれば、恋仲になる相手がいるんじゃない?」

「お絹さん、僕は、まだ、世帯を持つことは、考えていませんよ。」

「そうなんだ、、、吉之助さんは、まだなんだ。結構、奥手なのね、、、。」

「お絹さん、馬鹿にしないで下さいよ。私、吉之助、まだ、人生で、やらなければいけないことが、沢山あります。世帯を持つことまで、考えていません。」

「へー、そうなんだ。」

お絹は、何となく納得したような、しないような顔をして、天ぷらうどんを注文した。

近くで、草太が、たぬきうどんを食べながら、2人の話を聞いていた。

お絹は、次に草太に話を振った。

「そうそう、草太は、どうなの相手はいるの?」

「さっぱり、さっぱり。」

「何だ、草太も相手がいないんだ、、、。ふーん。」

「ぜんぜん、ぜんぜん。」

「草太は、今、そうしてる?」

「浪人、浪人。」

「草太って、さくら茶屋の近くの領主さんに仕えてたんだけど、代が変わって、クビになっちゃったんだよね。」

「そう、そう。」

草太は、うどんを音を立てて、吸い上げた。

 お絹は、また、話を吉之助に戻す。

「吉之助さんて、景気がいい方なの??」

「お絹さん、僧侶ってのは、お金に縁がない職業みたいで、財布の中は、いつも寂しいものなんだよ。」

「へー。そんなもんなんだ。」

「ところで、お絹さん、変わった話をするけど、影ってのを聞いたことがある??」

「影って何なの、人とか物とかの影のこと?」

「影と呼ばれている人たちのことだよ。和尚さんから、聞いた話なんだけど、村人が困ったり、大変な思いをしている時に、突然現れて、助けてくれる人たちのことなんだ。」

「へーっ、そんな都合のいい人がいるんだ。でも、全然、聞いたことがないよ。そうだ、草太は、その影って知っている?」

「全然、全然。」

草太は、首を横に振りながら、ぼーっとした目つきで答えた。

 お絹が、笑みを浮かべて話を続けた。

「そうだ、今度、鮎川料理店の裏の空き地で、明日、人形浄瑠璃の張り出し公演があるみたいよ。二人とも、一緒に行ってみない?」

「お絹さんって、すごいですね。そういう情報は、しっかり、押さえているんだから、、、。人形浄瑠璃か、久しぶりだな。お絹さん一緒に行きましょう。」

「そう、草太はどう?」

「行く、行く。」

「やったね。それなら、話が早い。三人で明日、人形浄瑠璃を見に行くことに決まりね。」

 お絹は、お代を、うどん屋の旦那に渡して、走って行ってしまった。

 三人は、明日、未の刻、鮎川の近くで公演される、人形浄瑠璃を見に行く約束をしました。

 

第四話

徳川斉昭の藩政改革

 徳川斉昭は、第9代水戸藩主で、幕末に活躍し、水戸藩の藩政改革を積極的に推進しました。西洋の知識によって国力を強化しようとしました。財政の健全化、教育制度の改善、産業の振興など、多岐にわたります。

 斉昭はまた、「尊王攘夷」思想の支持者でもあり、開国に対して批判的でした。彼は、皇室を重んじる政策を推進し、後の明治維新に大きな影響を与えました。

 財政改革として出費を削減し、新たな収入源を確保することで、藩の財政基盤を強化しました。新しい農法や灌漑設備の改善によって、農業の生産性を向上させました。商工業を奨励し、経済活動を活性化させました。「弘道館」などの教育機関を設立し、幕末期において最大の藩校となりました。文武両道の教育が行われ、優れた人材を育成しました。

 斉昭の改革は、近代化の先駆けとなり、他の藩にも影響を与えました。しかし、幕府や保守的な勢力からの反発を招き、斉昭自身も度重なる妨害を受けました。それにもかかわらず、彼の改革は水戸藩だけでなく、日本の近代化に大きな影響を与えました。

「尊王攘夷」とは、皇室を重んじる政策であり、後の明治維新に大きな影響を与えました。

 

第五話 鼠小僧次郎吉が捕まる

 鼠小僧次郎吉が捕まって処刑されてしまいました。今まで、幾度となく捕えられたものの巧みな方法で脱獄してきました。盗んだ物を、自分のものにするだけではなく、貧しい人々に分け与えているということで、鼠小僧は大衆に支持されている面もありました。しかし、その鼠小僧も今回だけは、お陀仏、捕獲され処刑されてしまいました。でも、一部の人の間では、生きていると、、、。

「さあ、大変だ、大変だ。鼠小僧次郎吉が捕まった。

世紀の大泥棒鼠小僧が、処刑された話だ。

寄ってらっしゃい、見てらっしゃい。

鼠小僧といえば、軽やかで足音も立てずに、まるでネズミのように、屋敷や蔵に忍び込んで金品を盗む、盗人だ。そう、その盗人鼠小僧が、とうとう今日は、一貫の終わりだ、磔にされて斬首されてしまったんだ。

しかし、話は、ここで終わらない。まだ、鼠小僧次郎吉は生きているという情報があるから、摩訶不思議。

そう、その後の話は、この瓦版を買って読んでくれ。

鼠小僧が生きている。誰が逃がしたのか、不思議だとは思わないか?

知りたかったら、この瓦版に書いてあるから、読んでみてくれ。」

 そこへ偶然、吉之助と草太が通りかかった。

「草太、鼠小僧が捕まって処刑されたんだって。草太は、どう思う。」

「ちょっとガッカリ。」

「そうだよな、鼠小僧っていったら、ただの盗人じゃなくて英雄みたいにもなっていたからな。でも変だと思わないか?まだ鼠小僧次郎吉が生きているって言っている人がいるみたいだよ。」

「生きているかもね。」

「草太も、そう思うのか。僕も生きているかもしれないと思っているよ。でも、10両盗んだら死罪と決められているから、仕方がないことなのかもしれない。」

「お金に困ったら、盗りたくなるし。」

「それは、分かるけど、やっぱり、人の物や、お金を盗むことは、良くないことだよ。その辺は、しっかり、ケジメをつけた方がいいから、処刑されるのは、当然かな。でも、生きているかもしれないって思っている人がいるけど、やっぱり願望なのかな?」

「そこまで、分からないよ。」

「そう、今度、お絹さんと草太と僕と、3人で人形浄瑠璃を見に行く約束をしていたね。草太、明日が見に行く日だから、忘れないでね。」

「分かったよ。」

 その日は、特に冷え込んでいた。灯も震えるかのように、ぼんやりと輝いている。時折吹く風は鋭く、体を突き刺すようだった。家路に近づくと明かりが見え、暖かさを約束している。

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この記事を書いた人

こんにちは!私はウェブライターのYasuと申します。コンテンツの制作と編集に情熱を注ぎ、情報を魅力的に伝えることに喜びを感じています。独自のスタイルで情報を提供し、創造的なアプローチを用いてコンテンツを編集・改善します。

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